「ロンウィの工場に行ってもいいですか?」


気づいた時には、社長にそうメッセージを送っていました。


「勿論、大歓迎です」


「気が早いですが、近い将来、日本の方々にロンウィを届けたいと思っています。現地で商談をする機会を頂けませんか?」


「なるほど。直接会って話をしましょう。いつ頃フランスに来れますか?」


「来月の第3週なんてどうでしょうか?」


「その週が予定が合いません。第4週でしたらアテンドできます」


「ではその週で是非お願い致します」


「分かりました、お待ちしています」


あれよあれよという間に、ロンウィへ行くことが決まっていきます。もうワクワクが止まりませんでした。


百貨店での勤務は、休みは暦通りでないため、週末・祝日関係無く働きますが、その分一度に長期連休を取得できます。その連休を活用し、ロンウィへ行くことに決めました。


妻は当時、紳士靴売場のバイヤーを担当しており、イタリア出張から帰国した直後で、売場改装等でバタバタしていた時期なので、生憎一緒に休みは取れませんでした。


「来月、ロンウィに行ってくる」


夜10時頃に帰宅してきた妻にその旨を伝えると、「いいね!楽しんできて!」と満面の笑みで賛同してくれました。妻は基本、私がやろうとするに何でも同意してくれて、自由にやらせてくれます。いつも本当に感謝しています。


さて、行くとなったら早速準備をはじめます。


まず、Expediaで「成田→ シャルル・ド・ゴール」を検索します。旅行ではない出張の場合、旅費は少しでも浮かせたいという思いがあるため、最安値のチャイナエアの北京経由でパリ入りすることに決めました。帰りは気分転換のために、上海経由にしてみました。(結果、何の気分転換にもなりませんでしたが・・・)


プライベートの旅行でもそうですが、私の性格上、未知なる地への旅となると、Excelでタイムテーブルを作って、「どの駅から、何時発の電車に乗り、どこを視察して、次の場所に向けて何時に出発して、何時発のバスに乗るか」などを詳細に決めておかないと気が済みません。


勿論その通りにいかないことが多いですし、現地での流れに身を任せる旅もとっても好きですが、大枠は決めておきたいのです。


そして何より、現地の交通情報サイトと睨めっこして、目的地までの点と点を繋げていく作業がこの上なく楽しいのです。


旅行だとこの段階でTrip Advisorを開き、現地グルメを徹底的に調べ尽くしますが、出張の場合は予定が読めないのでそれほどしませんでした。


それと、この時に屋号を決めました。

TYSENN(タイセン)と名付けました。TYSENNとは、「Types of Sensation」の略です。直略すると「感覚の種類」、すなわち「五感」を意味しています。これは百貨店で働いてきた私が常に理想としてきた「五感を刺激する売場」を、今後は自ら具現化していきたいという想いを込めて名付けました。


また、この時初めて「自分の名刺」を作成しました。

現地での商談に備えるためです。会社員だと会社が勝手に作ってくれる名刺。自分で自分の役職などを記入するのは少々恥ずかしい気持ちでしたが、ネットで簡単に発注ができました。


そしてこの頃には、ロンウィの社長の紹介などにより、パリやマルセイユを拠点に活動するフリーランスのアーティストやデザイナーたちとインスタグラムを通じて交流を持つようになっていました。準備期間中、彼らにも連絡をして、「パリで是非合流しましょう」と呼びかけました。


今現在、TYSENNのオンラインストアでエキシビションを開催している「Nicolas Blandin<ニコラス・ブランディン>」もその一人。彼は私のTYSENNプロジェクトに一番に賛同してくださった才能に満ち溢れたアーティスト、そして今では良きパートーナーです。


そんなこんなしている内に、あっという間に出発の2019年11月24日を迎えます。


当日は妻も休みだったので、成田行のバス停まで見送りに来てくれました。


バスがゆっくりと動きはじめ、窓越しで妻に手を振り、ロンウィへ出発しました。


こうして、TYSENNプロジェクトとしては小さな、でも自分の中では大きな一歩がスタートしました。


TYSENN設立には、他に様々なことが関係していますが、一番のキッカケになったのは以上の通りとなります。


Instagramアカウントのハイライト「trip#1」と「trip#2」にて、その後の旅の一部始終をアップしています。宜しければご覧くださいませ。


今後より多くの皆様のご期待に応えられるよう、徐々に商品を拡充して参りますので、引き続き応援の程、どうぞ宜しくお願い致します。


Written by T.A