Vo.17 百貨店をつくりたくて、TYSENNをつくった話

「TYSENNって、設計事務所なんですか?インテリアショップなんですか?何が本業なんですか?」


これは、お客様やお取引先様から、最近よく聞かれる質問です。


確かに、私たちは、ある日は新築戸建をつくるために現場へ行き、別の日にはリノベーションの打ち合わせをし、その翌週には百貨店でイベントを開催している。


自分でも、少し不思議な会社だと思います。


では、TYSENNは一体何をしている会社なのか。


今回は、TYSENNを立ち上げる前の話から、私たちが目指している姿について、少しお話ししてみようと思います。


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少し変わった話かもしれませんが、TYSENNを立ち上げる前、私は「百貨店をつくりたい」と思っていました。


私は以前、高島屋という百貨店に約10年間勤めていました。


百貨店という言葉は、その名の通り「百貨」—つまり、衣食住をはじめ、様々なものを取り揃える場所という意味を持っています。


食料品売場には和菓子のプロがいる。


寝具売場には枕のプロがいる。


ファッション売場にはスーツのプロがいる。


一つの建物の中に、それぞれの分野のプロフェッショナルがいて、広い領域をカバーしながら、その一つひとつを深く掘り下げている。


私は、そんな百貨店という業態が好きでした。


そして、いつからか、



「いつか自分で、新しい百貨店をつくってみたい」



と思うようになりました。


世界を見渡してみると、百貨店には100年、200年と続く老舗が数多くあります。


フランスならボン・マルシェ。


イギリスならハロッズ。


アメリカならバーグドルフ・グッドマン。


日本なら三越。


一方で、「新しい百貨店」は、ほとんど生まれていません。


せっかく自分で会社をつくるのであれば、今までにないものをつくってみたい。


そう思い、起業に向けて準備を始めました。


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ところが、いざ事業として考えてみると、百貨店というものが、いかに大きな存在なのかを思い知らされます。


店舗


商品


人材


物流


仕入れ


販売


運営


一人の人間が簡単につくれるものではありません。


「百貨店をつくりたい」という気持ちはあっても、現実的には、あまりにも大きな話でした。


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そんなとき、私の記憶に残っていたのが、当時、三越伊勢丹の社長だった大西洋さんが掲げていた「十貨店」という考え方でした。



「百貨店ではなく、十貨店」



この言葉が、当時の私にはとても印象的でした。


百貨店が「百」を扱うのであれば、十貨店は「十」。


すべてを取り揃えるのではなく、あえて領域を絞る。


その代わり、その領域については、深く掘り下げる。


私は、この考え方にとても共感しました。


そして、



「これなら、自分にもできるかもしれない」



と思ったのです。


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では、TYSENNは何の十貨店なのか。


私がたどり着いたのは、「住」という領域でした。


ただ、最初から「住」でいこうと決めていたわけではありません。


これまでの仕事や、いろいろな人との出会い、ご縁やタイミング。


そういったものが重なっていく中で、少しずつ「住」という領域に定まりました。


一つの商品を選ぶところから、住空間全体をデザインするところまで。


「インテリア」という一つの領域を、できるだけ深く掘り下げていく。


それが、私が考えるTYSENNの「十貨店」です。


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最初の質問に戻ると、ではTYSENNは、家具屋なのか、セレクトショップなのか、設計事務所なのか。


そう聞かれると、どれも少し違うような気がします。


もちろん、家具も扱います。


空間の設計もします。


イベントもします。


けれど、それぞれが別々の仕事なのではなく、すべて「住」という一つの領域の中にあるものだと考えた上で日々行動しています。


モノから空間まで、その間にあるものを、自分たちなりの視点で編集していく。


それがTYSENNの仕事です。


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いつか、本当に百貨店をつくれるかどうかは、まだ分かりません。


TYSENNはまだまだ小さい会社ですし、もしかしたら、実際に建物をつくることはないかもしれません。


でも、今はその答えを急ぐ必要はないのだと思っています。


まずは、目の前の一つひとつの仕事を通して、「住」という世界をもっと深く知ること。


その積み重ねの先に、いつかTYSENNらしい「百貨店」の姿が見えてくるのかもしれません。


百貨店をつくりたくて、TYSENNをつくった。


その夢は、今も変わっていません。


Written by Tatsuro Awano